2010年10月3日日曜日

カリーナ1600ST

僕は駐車場に向かって歩いていった。カリーナ1600STは変わらずそこにあった。キーをまわしドアーをあけ運転席に座ってみた。何も変わっていない。独特のシンナーっぽいにおい。低い視界。僕はしばらくそこに座って感慨にふけっていた。




ふとみると、女性が車のドアーの脇に立って窓をたたきながら何か叫んでいる。カリーナはそんなに静粛性が高いわけではないのに何を言っているのか聞こえない。

「何かありましたか?」窓をあけていった。

女性は「あら、違うじゃない!なによ!」といって、ドアーを蹴り上げた。

「なにをするんだ!」と、言いながら外へでてみるとドアーの真ん中がぽっこりとへこんでいる。

「どうするんだよ~!これ~!」と僕が言うと女性は「直せばいいんでしょ?おいくら?」

僕は頭にきて「理由も無く人の車を蹴ってへこませてその言い草はないだろ!」と詰め寄るとスーパーの買い物袋と2歳くらいの子供を抱えた男性が「どうしたの?」といって近づいてきた。

女性は「あなた~、私の不注意でこの方の車、へこませてしまったの。直して差し上げて。」と言った。

「それはすいません。妻のやってことは僕が責任を取ります。どうぞ、修理をして請求書をこちらに回してください。」

僕は「いやいや、そういわれてこのまま帰ってもらって住所も電話番号も分からぬでは困る。お名刺とか保険証書はありませんか?」と言うと、保険証券を持ってきた。

名刺には千葉県のなんとかいう地名が書いてある。これ以上ゴタゴタしてもしょうがない。僕は名刺をもらって帰ってもらうことにした。

再び車に乗りドアーを閉めるとしっかり閉まらない。走行中に開いてしまっては大変だ。僕は事務所に行きガムテープをもらってきて乗った後、テープでぐるぐる巻きにした。このまま近くの修理工場へ行こう。ちょっと不安はあったがゆるゆるいきゃ大丈夫だろう。。。。



僕はエンジンをかけて走り出した。なじみの修理工場はここからそう遠くない。駐車場の出口まで行きブレーキを踏む。がものすごく効きが悪い。ふにゃ、っとした感じで床まで踏み込む。サイドを目一杯引かないと止まらない。・・・ありゃ~、長年、乗っていないからオイルでも漏れてデイスクについたかな?・・・



ここで僕はもうずいぶん、車に乗っていないことに気が付いた。不安がよぎったがすぐ近くなので大丈夫だろうと思い発進した。

国道16号を南下する。しばらく行けば着くはずなんだが着かない。風景もなぜか見覚えが無い。どうやら迷ったようなので大きな交差点を右折した。なにを思ったか曲がって反対車線に入ってしまった。トラックや乗用車がこちらに向かって走ってくる。プアーン!ビビビビビー!左の歩道へ乗り上げるようにして止まった。



「馬鹿やろう!なにやってるんだー!」口々にののしられた。気を取り直してUターンしたら前の車に追突。

しかも黒塗りの高級車。中から運転手らしい人が出てきた。「困りますね~!どこを見てるんですか?」今度はこっちが加害者。今日はどうなってるんだか。。。。

運転手と話していると後部座席の窓が開いて車の持ち主らしき方が声をかけてきた。

「君、怪我は無い?」

・・・え?僕の事?・・・

「はい。けがはありません。」

「君の車のドアーがへこんでいるようだけど・・・」

「あ、これは違うんです。これを修理しようと工場へもって行くところなんです。」

「工場はどこ」

「○×の○△です。」

「あ~、あそこの○○さんなら良く知っているよ。僕の車はなんとも無いから、気にしないでいいよ。君の車はひどそうだね。取りに来るよう頼んであげるよ。」

「え?ホントですか?申し訳ないです!僕の方がぶつけたのに。。。」



小1時間ほど待っているとレッカーがやってきた。若い男が3人。

金髪の小さい男とふとっちょと工場で見かけたことのあるつなぎの男。

「○○さんに言い付かってきました。お車お運びしますんで後ろで寝ていていいですよ。」

僕はほっとしてカリーナの後部座席で眠りに付いた。

目が覚めると金髪の男が運転している。助手席には太っちょ君が・・・

「あれ?自走して持っていくの?」

「あたりまえっすよ~!」金髪男がにやりと笑った。


To be continued

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